「…変身っっ!!」
一瞬にして蒼い鋼鉄の武装を身に纏う。慄くオーク達。


「さあ、誰から来る…?」
冷徹に喋る蒼い騎士は剣を肩に担ぐ。
大勢で仕掛けるオーク。しかし、


「……甘いっ!!戦慄の舞っ!」
一瞬のうちに全てのオークが血飛沫をあげてその場に倒れこむ。


後方で控えていたオーク達は唖然とした表情で見つめている。
オーク達の血飛沫を浴びながら立ち尽くす蒼い騎士を…


一歩一歩ずつオーク達に迫ってくる。誰も恐れをなして後ずさる。


「どうした…?誰も掛かって来ないなら、俺から行くぞ…?」


しかし、どこからか小剣が飛んでくる。それを弾く騎士。青い騎士が振り向くとそこには黒いエルフがいた。


「貴様、この国勝手に入ってきて荒らすとは少々乱暴が過ぎないか…?」
微笑を見せながら語りかける黒いエルフ。


「姫君を罠に貶めてこの国を乗っ取った貴様に言われる必要はないと思うが…」
剣を力強く握る騎士。


「ほう…そこまで知ってるか…その強さ気に入った…どうだお前もここで騎士を務めてみるか…快楽も得られることができるぞ。」
黒いエルフは微笑を浮かべたまま話しかける。


「遠慮しとくよ…ここには何処にも正義は無い…」

「そんなもの求めてどうする…?ただ快楽があればいいだろ…?」

「貴様はほんとにわかってない…それに俺には使命がある悪を絶つ騎士としての務めが…」

「ならば交渉決裂だ。さっさと失せろ…」
そしてエルフは攻撃を仕掛ける。ぶつかりあう剣と剣。

「やるな…だがっっ!!」
青い騎士はビームセイバーを展開させる。

「何っ!?」
黒いエルフはいきなりの攻撃に退く。

「まさか、そんな飛び道具があるとは…貴様何者だ…?」

「…正義を司る者…」
青い騎士は二刀流で攻撃を仕掛ける。しかし、

「無駄だ…っ!」
一気に剣を突き立てる黒いエルフ。

「ぐっ…!!」
青い騎士の左腕を突き刺す。そしてその場に膝をつく。

「ふん…所詮は生身。装甲の薄い場所を狙えばいいこと…さあ貴様を首を取ることにしよう。やれ!オーク共!」
その声に動かされオーク達は威勢をつけて飛び掛ってくる。

「ほんとに下衆な奴等だ…」
青い騎士は小さく呟きながら、オーク達に取り込まれてしまう。
だが、取り込んだ間から金色の光が漏れだす。そして、

「雑魚は…引っ込んでろっっ!!」
その周りは一瞬にして溶け出しまたオーク達も苦しみだし干からびてしまう。

「一体どういうことだ…?」
黒いエルフの顔が驚きと困惑の顔で一杯になる。
蒼から金に変わった騎士は、

「俺は太陽の神を主とするもの。シャイニングサンを喰らった者は太陽の輝きによって干からびる…そしてこの輝きは怒りの象徴だ…っ!!」

初めて黒いエルフが慄く。
「太陽の神だと…そんなものがこの世に…」
「すまないが…俺はこの世に世界の人間じゃない…だから貴様らに天罰を与えるために来た…どうやら、もう平常心は保てないようだ…貴様ら全員ぶっ潰すっ!!」
黒いエルフはその場から逃げ出そうとする、しかし後ろに振り返ればすぐ目の前に金色の騎士がいた。慄く黒いエルフ。

「消え失せろ…!!」
冷徹に言い放つ騎士は一気に剣を胸に突き刺す。
「ぐぉっ…!!」
黒いエルフの顔が歪み、高熱を放出した剣によって跡形も無く消える。
オーク達はほとんどが干からびていた。


騎士は変身を解く。そして部屋へと進む。
戸を開けるとそこには異臭と薄暗さが漂う。そして目の前にはあられもない姿をした姫君達がいた。そこには2人のオークもいる。

「ほんとに哀れと言いようが無いな…」
落胆の表情を浮かべる騎士。
「貴様、何が言いたい?」
オークの長が尋ねてくる。


「いや、堕ちるとこまで堕ちたと思ってね…」

「ふん…貴様は一体何をしにきた…他の者は…?」

「貴様はほんとに馬鹿だ…俺がここにいる時点で奴等はすでに地獄に行ってる…貴様は快楽に溺れてそれすら気付かないのか…?」
騎士の声のトーンが低くなる。

「そんな馬鹿な…お前如きに…」

「ここで貴様らには死んでもらう…変身っ!」
再び青い騎士へと変身する。

「その姿は…!?」

「堕ちるがいい…闇の底へ…デッドエンドクラッシャー!!」
一気に闇に取り込まれるオーク達。

「ぐああああああああああああああ!!」
絶叫と共に虚空の彼方へと消え失せるのであった。

騎士は変身を解きながら姫君に進む。
慄く姫君。

「…あなたは何をしたか分かってますね…?」

「……」
怯えた表情でコクリと頷く。
「どれだけの民が傷つき、穢れ、この国を荒破させたか分かってますね…?」
「……」
再び頷く。そして一筋の涙を流す。
「もうこの国は立て直すこともできない…あなたは前に異種間との交わりを後世に継げろと言った…そんな屈辱を後世に語り継げたっってなんにもならない…あなたはあのオークと共に成り下がった下衆だ…いや、それ以下だ…あなたのその罪は死んだって償いきれない…」
「…仕方無かったのです…」
絞りきった声で話す。しかし、騎士は頬の平手で打つ。

「そんな簡単な言葉で収めないでください…!!」
騎士の目には怒りの目が向けられている。

「…なら、何故もっと早く私達を助けに来なかったのですか…あなたは?」

「俺はこの世界の人間じゃない。君達の危機を知りやってきた…だけどもう手遅れだった」

「なら、それもまた運命なのでしょう…」

「だから、抗いたいんです…とことん抗って這い上がる…それをせずにあなたは快楽へと堕ちた…」

「もう、無理だと思って諦めてしまいました…最後の希望など何も無くて…」

「この憤りを何処にぶつければいい…?」
 
「私には分かりません…ただ分かったことは…正義があったこと…」

「あなたの罪は重い…だから時の彼方へ葬ります永久に…」

「……はい…」

そして天井が砕け、中に巨大な手が入ってくる。

「この国を消去します…」
騎士はそう言い、手のひらへ上がる。
コクピットに移り騎士は大空高く舞い上がる…
その白と金の機体を眺める姫君。


「…嗚呼、私は…」

彼女が言いかけた瞬間に光で全てが覆われる。


「…たとえ、正義を持っていても守れないものがある…」
騎士は光に包まれた国を見ながら呟いた。


「せめて安らかに眠ってくれ…」
そして白と金の機体は異世界へと再び戻る…


(私は…もう一度希望を見てみたい…)


光が消えた時にはそこには静かな緑の草原しか残らなかった…