俺に残された選択は破壊することしか選べないようだ…後にどんなに後悔しようとも…


最終話「世界が終わり、始まる」

 青年は独りで何千もの魔王軍の兵士と戦っていた。しかし、彼は決して不利な状況ではなかった…
 「はあああああっ!!」
青年は叫び声を発しながら敵兵に突っ込んでいく…2本のライトセイバーを持ちながら。見事な手捌きで次々に切り裂いていく。その様子はまるで鬼神の如く。
そして兵士達は慄き中々攻撃を仕掛けない。そんな中で青年はただ敵がいる中へ突っ込み切り裂いていく。辺りは倒れた天使の姿もあったが彼にはもはや敵を倒すという本能しか持ち合わせていなかった。
その時、青年の前で光弾が発射される。しかし瞬時に2本の剣で弾く。
 「中々やるボウヤね。」
青年は怒りの目を城の頂上にいる女に目を向ける。
 「貴様、魔王は何処だ?」
青年は呻くような低い声で問いただす。
 「会ってどうするつもりかしら?」
女はふざけた口調で逆に問いただす。
 「天界を失楽園へと変貌させた代償を死を持って払ってもらう…!」
 「ふふっ今更敵討ちなんて見苦しいわよ?それにあなた本気であのお方に勝てると思ってそんな生身で…。」
女はおかしく思い笑っている。
 「ああ、本気だ。それに敵討ちじゃない…この世界もろとも破壊しに来ただけ。」
 「なっ!?馬鹿じゃないのそんなこと!ボウヤに出来るわけないわ。ふっ…今また冥界からデビルラザーをたくさんくるよう命令したわ。さすがに大部隊ではボウヤも勝てないわよ?」
 「話は終わりださっさと魔王の居場所を教えろ…!」
青年はこれ以上話をするつもりはなく、戦闘態勢に入る。
 「私を倒すことね。そうすれば教えてあげる…」
女は挑発する。しかし、これが後に後悔へと繋がる。
一瞬のうちに青年はジャンプし腰から銃を抜く。いきなりの出来事で唖然としていた女も一気に間合いを開く。銃弾は女の髪を掠めていく。
 「くっ!やってくれるじゃない…ボウヤほんとに人間?」
 「いいや。ヴィギランスだ。」
 「神の代官って一体?…っう!」
女は一瞬の隙を突かれセイバーで腕を切られる。
 「あまいっ!!弱すぎるよ!!」
青年は一気につめより攻撃しようとする。しかし、
 「まだよっ!!」
女は杖を掲げ呪文を唱える。そして一瞬にして青年を吹き飛ばす。
 「ぐあああああっ!!」
青年は吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。なんとか起き上がる青年。両者の傷は深い。女は腕から血を流し、青年はいたるところが傷だらけ。
 「詰めがあまいのよっ!!」
女は再び攻撃を開始する。しかし、
 「やめろ…!」
とある方向から声が聞こえる。そこにはある男が立っていた。
 「ああっ、魔王様…」
魔王と呼ばれた男は女ところに近づく。
 「遊びすぎだ…人間如きに傷を付けられるとは…」
 「しかしあいつはただの人間ではない…ヴィギランスと名乗っていました。」
魔王は膝をついてこっちを睨みつけている。
 「ほお。そのヴィギランスとやらは何しにここへ来た?」
 「貴様ごとここを破壊するために…!」
低く呻く青年。
 「だが俺を倒せるかな?天界を侵略し魔法も効かぬ俺に…」
 「ああ、倒してやるよ…木端微塵になっ!!」
青年は立ち上がり腕につけてあるブレスレットを使いポーズをし、
 「変身っっ!!」
掛け声と共に青年の身体を蒼い光が纏う。そして、蒼い装甲、武装をした戦士が目の前に姿を現す。
 「こりゃあ、驚いた。そんな隠し武器を持っていたなんて…」
魔王は余り驚いた顔をせず冷静に答える。
 「たかがただの武装。我らの対魔法武装には勝てない。」
そして、周りに大勢の兵士が姿を現す。
 「最初から本気で行くぞっ!」
青年は叫び一気に走り出す。そして一瞬のうちに消える。
 「どこだ!?」
消えた蒼い騎士に戸惑う兵士。そして攻撃が開始された。とてつもないスピードで。
目にも止まらぬ速さで兵士達が倒されていく。ある者は頭を斬られたり、胴体を真っ二つにされたりした。そして一気に決着が付く。魔王のすぐ目の前で蒼い騎士は剣を喉もとに突きつけていた。
 「…っく!!」
魔王の顔が歪む。
 「すまないな。強すぎて…!」
騎士は一気に突き刺そうとする。しかし、
 「はああああっ!!」
 「えいっ!!」
騎士の目の前でいきなり剣が2本振りほどされる。騎士はいきなり現れた2人の剣士を見て驚愕とした。
 「何故君達が…。」
絶望したような声で騎士が喋る。
 「私達は魔王様の奴隷…守るのも務め…。」
 「…っく!どうしてあなた達が!天界を奪還しないんですか!?」
 「そうよここは既に魔王様のもの…」
奥から青い髪の女性が降りてくる。
 「くそっ!!結局間に合わなかったのか…何処まで非道なのだろうか?」
騎士は変身を時は地面に膝を付く泣く。
 「なぜ泣くのですか?」
蒼い武装をした女剣士が訪ねてくる。
 「うっ…助ける…事ができな…かった…から」
涙ながらに青年は答える。
 「これが絶望だ…さあ貴様も充分味わって死ね!」
魔王が高らかに言う。青年はにらめ付ける。そして一瞬のうちに蒼い騎士に変身する。そして金色に光りだす。
 「なっ何、貴様何をするつもりだ!?」
 「…」
騎士は何も答えず再び消える。そしてすぐに定位置にもどる。そして剣をしまった途端、周りにいた者たち全てが血飛沫をあげる。その中には魔王の姿も…。
 「あなたは何もかもやりすぎた。その代償は払ってもらう…」
騎士は今までにない冷徹な声で喋る。
 「もう無理なら俺はなんだって切り裂く。女神が既に下衆へと成り変ったのなら…」
騎士は拳を握り締める。その腕は震えている。
 「破壊しますこの場所を…もう一度やり直すために…」
もう息もしていないひとつの遺体に話しかける。
そして向き直り。再び消える…いや超高速で走り出す。


走っている途中にある物を見つけた。折られた杖。彼の中でそれが目に止まり手に取った。そして再び走り出す。
変身を解き、機神のコクピットに戻りまず杖を元に戻した。
 「さらば…そしてまたいつか平和な場所に…」
天界は一気に光に包まれる。周りを囲んでいた。黒い悪魔達も巻き込みながら。


そして光が消えたときそこには緑の草原でいっぱいになった場所になる。青年はそこに降り立ち、歩き始める。頂上を目指し…。
青年が頂上にたどり着き持ってきた杖をさす。その頂上の上には巨大な卵の形をした物体が浮いていた。
 「破壊の次には必ず創造がある…俺は祈るよ…再びもとの平和な日々を取り戻すことを。」
青年は再び涙を流して両膝を付く。
 「くそっ!…まだ、まだ何とかできたはず、なのに俺は破壊を選択した…あの世界にいたもの殺してしまった…うぅ…」
悲しみが増し涙を流す。
 「それでもコウイチさんは出来る限りの事をしたと思います…」
青年=コウイチの後ろには女性が立っていた。
 「えっ!?」
後ろを振り向くコウイチ。そこには自分にとって最愛の大切な人が立っていた。
 「コウイチさんは精一杯やった。それでいいじゃないですか…あなたは苦しまなくていいんです…ちゃんと彼女達を救うことが出来たのですから…」
笑顔を振りまく女性。そしてコウイチに近づく抱きしめる。
 「少し休みましょう…いろいろな世界であなたは絶望を見すぎました。今は少しだけ離れましょう。」
 「うぅ…くっ…うぁぁ…」
コウイチは彼女の胸の中で泣く。


そういつだって救えない命はあるだけど、いつかそれが繰り返されない日がやってくるはず…彼女達の死は新たな始まり…俺にとって今はそう信じることしか出来ない…


終わり…