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「烈火のブライトエクシード」
第1話「そして嫉妬は烈火を呼ぶ」Aパート
誰もが寝静まった真夜中で、二人の男女が裏の路地を走り抜け、時々水溜りを踏みながらも懸命に”何か”から逃げていた…
彼らの後ろはただ不気味に闇が支配してるだけ…
しかし、何かが存在してることは確かだった。
男は女の手を堅く握りしめて、引っ張っている。そして建物の間に急いで隠れる。
二人の呼吸は荒く、息を潜めることが難しい。
だがそこにゆっくりと足音が迫る。
二人は一気に凍りつき、息を止める。しかし、心臓の鼓動は速く息を止めるのがとても辛い。
足音と共にひっそりとした声が響く。
「ねえ、なんで逃げるの?さっさと出てきてよ…」
擦れた声で訊ねる女性がいた。だがその女性の姿は尋常ではなかった。真っ白いワンピースだが、所々に赤いシミが付いている。それはまるで返り血を浴びたように…いや、実際に浴びたのだ。片手に出刃包丁が赤い液体も混じり、光っている。
「でもね、あのメス豚と出てきたら私殺しちゃうよ…さあ、あんなのほっといて出てきて…」
出刃包丁を持っている女性の声と足音はどんどん遠ざかっていく。
二人は女が遠ざかったのだと思い、息を吸い込んだ。しかし、動悸は収まらない。さっきの姿が恐怖で混乱しているからだ。
「早くここから逃げよう…彼女はおかしくなってる…そうだ警察署に行こう!」
男は早く薄暗い場所から去りたいのか早口で喋る。
「え、ええ、行きましょう…手を放さないでね」
女は少し控えめに言う。
「ああ、分かってる…大丈夫だ…安心してくれ」
そう男は言いながら、女を抱きしめる。
「離れたくはないわ…だって、私は……!」
途中までいいかけた女の顔が一気に固まる。女は見てしまった。男のすぐ後ろに出刃包丁を振りかざした般若の姿を…
そして、真夜中に大きな悲鳴が上がったのだった…。
…翌朝
1人の青年が目を覚ます。カーテンからこぼれる太陽の陽射しを浴びながら、
「今日も平和な始まりだ…」
と微笑を浮かべ着替え始める。そしてすぐに着替え階段を降り、朝食とお弁当の準備をする。とてもゆったりとした光景だった…。
そして、全ての支度が出来、朝食を食べるため、テレビを付け、椅子に座り、朝食を食べ始める。
「―次のニュースです。昨夜、東区津島町で男女の殺傷事件が発生。地域の住民が悲鳴に目を覚まし現場に駆けつけたところ男女は重なり合いながら血が大量に流れていた状態で発見。2人とも出血多量で死亡していたとの事です。現在、警察の調べによると、殺傷された被害者の男性は以前、警察に『分かれた女性にストーカーされてる』との届出が出されており、その女性の行方を追っています…」
テレビから流れていたニュースに唖然とした青年。
「平和だと思ったら、5キロ先で殺人事件とは、朝っぱらから胸くそ悪い。」
青年は一気に落胆の表情をする。
「―しかし、最近になって恋愛関係の問題が多発しています。恋愛関係での事件は今年で1500件を越し、その内3000人の死亡者を出しています。警察は何の対策も講じぬままただ事件の捜査だけに専念する状態。現在、国会でも議論が巻き起こり、社会現象と化しています。」
「…嫉妬というものなのかな?これって…」
青年はニュースに耳を傾けながら、ポツリと呟き、朝食を済ますのだった。
そして、青年は家を出てすぐ隣の家に向かうのだった。
…続く