超王機神インティスト・番外編

「世界を再生させて…〜創造〜」

そこは海が青く澄み渡る美しき地球だった…

しかし、地上ではすでに全てが変わり果てていた…

崩壊したビル、道路を埋め尽くす誰も乗車していない車

そう、地球は既に侵略されていた…

そこはもはや安息の地ではなかった。

男は重労働させられ、女は陵辱の限りを尽くされる

こんな事になってしまったのは数年前に襲来した悪の組織による仕業だった。その組織にいた者もいたが為す術もなく屈服させられる。そして、悪の組織は銀河をも支配しようとし侵略に乗り出すが、再び対抗するものが現れる。しかし、それもまた屈服により終わってしまった。

この世界にはもはや希望も夢も正義も存在しない。悪が蔓延る暗黒の世界と化してしまった。

しかし、奇跡は起こった。1人の男がこの世界にやってきた。そして世界は再び天上の光に照らされようとしていた。


地球…
その荒れ果てた都会の青空に歪な穴が出来る。真ん中はとても黒くまるでブラックホールのように何もかもを吸い込みそうな感じをかもしだしてた。その中心から光が漏れ一筋の閃光が空を突き抜ける。そして一筋の閃光を放った物体が姿を現す。
それは白と所々に散りばめられた金色があるロボットだった。そのロボットは大きく6枚の翼を展開させながら荒れ果てた都会に着地する。
そして片膝を曲げ地に付け、騎士が忠誠を誓うような姿勢になる。胴体部分のハッチが開きそこから一人の男が姿を現す。
男は空を見上げ、ふと呟く。

「――ついに最凶の悪に追い付いたな――」

男は空から照らす太陽に手のひらを翳す。それはまるで太陽と戯れる少年の様だった。

第1話「世界の終わりと始まり」

「もう一度最初からやり直そう…そのために俺がここへ来たのだから」

彼は1人呟きながら、真剣な眼差しを空に向ける。しかし、言葉には悲しさが表れ顔にはどことなく寂しげな表情を浮かべる。まるで運命を嘆いているように。

「俺が何処まで頑張っても拭い去ることの出来ないものと分かっても希望を求め続けるさ。」

そう呟いた後、彼は運命に抗う決意をした顔になった。

その時後ろに人影が迫る。

「あなたは何故そんなところに居られるのですか?」

突然若い女性の声が背後に聞こえ、男は腰に着けてるホルスターから銃を抜く。そして銃口を女性に向ける。

「きゃっ!い、いきなりそんな物騒な物こちらに向けないで下さい。」

女性は短い悲鳴を上げながらも怯えながら言い放つ。男は暫く訝しげな表情を浮かべていたが、やがて銃を下ろす。

(何者だ…この人?俺が気づくうちに背後に回り込んだ。只者ではないな…)

男は女性の表情を見つめながら考えていた。
「あのー、そんなに真面目に見られると恥ずかしいんですけど…」

女性は耳を赤くしながら俯き気味で喋る。

「あ、失礼しました。でもこんな荒れ果てた場所であなた1人ではとても危険と感じるんですが…」

男は気を取り直し女性に訊ねる。

「他の者はいません…皆デマゴーグに連れ去られました。ここに残ってるのは私1人だけ…そういえば名前を名乗ってませんでした。笈川沙羅と言います。それで何なんですけど、あなたは一体何ものですか。そこにある巨大なロボットといい先ほど空に現れた黒い穴。」

沙羅と名乗った女性は男に信頼を寄せたのかさっきより表情が和やかになりながらも真剣に質問してくる。

「他の世界から来た者です。そして、自分の運命に抗うためにここに来ました。」

男は穏やかながらも真剣みのある声で話した。

「今ならあなたを信じられます。もう何が起こっても不思議な感じはありませんから…しかし自分の運命に抗うとは一体?」

沙羅は首を傾げながら訊ねてくる。

「悪を無くせる世界にしたい…そう思って抗ってるんです。ある人に言われました。決して正義も悪のどちらも消えることは無いのだと、世界は5分5分のバランスで保っている。だから決してどちらかひとつが消えることは無いのだと。」

男は何処か儚げに答えた。

「でも元にこの世界は混沌とした秩序しか残ってない。もう未来なんて何処にもないそれでも正義がまだあるって言うんですか?それならどうして悪が蔓延っているの?」

沙羅は言葉の活気を強めたが悲しげな表情をし喋った。

「そう、彼の言葉に真実は無い…だから俺が正義になれるよう今抗っているんです。でも全てを賄うことはとても出来ず世界にこんな結果を生んでしまった。」

男は悔しさを抑えながら腕を震わせ喋る。

「あなたに希望を託すことは出来ますか?」

沙羅は男を見つめながら真剣な声で訊ねる。

「…えっ?」

男はいきなりの言動にたじろぐ。

「前にあなたみたいに果敢に立ち向かった人達がいました。だけどその人たちはデマゴーグに屈服させられました。私達は絶望しました。もう何処にも信じれるものが無いのだと。だけど、だけどあなたならきっと…いや絶対に倒してくれるはず。私はあなたのその瞳にかけたい。今までに見たことのない優しさ、正義など全てを持ち合わせたあなたを…」

「俺は……勝ちます。例えこの身を犠牲にしてでも、必ず、あなたの希望に答えたいから。」

男は決心した。
(似てるな…俺の大切な人に。この身を犠牲にしてでもっていったけどここで俺は倒れるわけにはいかない。だけどこの世界を救いたい。彼女にはそれが分かって欲しい。戻れなかった時はごめんな…)
男はそんなことを思いながら機体へ向けて歩き出す。

「場所は分かってるんですか?分からなければ私がお供しますが…」

沙羅の質問に男は振り向かず、ただ右手を大きく振りあげた。”分かっている”という意思表示だ。

「…あっそうだ!名前を…名前を聞かせて下さい!」

沙羅は大きな声で彼に聞こえるよう両手を添えて聞く。
男は横顔を見せて
”コウイチ…マスダコウイチだ。”
小さくて聞こえなかったが確かそう言った気がした。
(頑張ってください、コウイチさん。あなたを信じます。)

そして、白い機体は大空に翼を広げ飛び立った。敵地へ行くために。

そう今、終止符を打つ戦いが始まり、絶望の世界は終わりへと歯車を進め始めた。すぐに壊れそうなぐらいに激しく回りはじめたのだ。


「…ふっ、この強い意志、とてもいいぞ。大きな絶望の源を生み出せる。さあ、オレにかかって来い!時の異邦人よ!ハーッハッハッハッハッハ!」


To be continued.....