書き直し。
・世界の救世主 リアクト



そこはどこを見渡しても真っ白な世界であった。
何も置かれず壁もなくただ白いだけ。
ただ窮屈感はない。どこまでも広大な白、境目などどこを見てもありはしない。
そこに一人青年がぽつりと立ち尽くしていた。
「ここはどこだ?俺は一体誰だ?」
彼は何も覚えていなかった…自分が誰でどのような経緯でここにいるのかも。
しかし突然何もない場所からひとつのヴィジョンが映し出される。
その映像に彼は驚愕する。
「なんだ!?これは一体…!」
そこに映っていたのはまさに地獄絵図であった。
人々は異形のモンスターに襲われ、暴力、捕食、凌辱の限りを尽くしていた。
そして誰もが憧れるヒーロー、ヒロイン達はその場に映し出されるが誰も動こうとしない。
いや、もう動かないのだ。確実にそれらは死んでいた。
ヒロイン達は凌辱され、ヒーローには死しかないそんな世界。


世界の救世主、リアクト。様々な世界を渡りその心は何を捉える?
第1話「世界を救い始める日」


絶望感が画面から漂って、青年は息を呑んだ。
世界は破壊されてしまったのかと…
彼は悲壮感をあらわにする。
「ただまだ全ての戦士がやられたわけではない。それに助ける術もある。」
いきなりの声に青年は驚き、声のした方向を振り向く。
そこにはもう一人の青年が立っていた。彼は淡々と話を続ける。
「このヴィジョンはいずれこうなるだろうという警告みたいなものだよ。」
「何?」
「今様々な世界は闇に包まれようとしている。ゲームでいえばバッドエンドが多くなってるってことだ。正義と悪のバランスは崩れ、全ての世界が悪という闇に犯されてしまうのさ」
「そのヴィジョンだかを見せて俺にどうしろと?」
「そこだよ。俺が君に頼みたいことは。」
「どういうことだ?」
「つまり君が世界を救ってほしい。今のところ君しかいないんだよ、適任者が。」
青年は驚く。いきなり壮大な話をされるのもそうだが非日常的すぎる。
「俺が世界を救うだと?」
「ああ、君は全世界の救世主として戦うんだ。」
(救世主だと。ふん、ジャンヌダルクでもあるまい。…時代錯誤だな。)
「ふん、馬鹿馬鹿しい。もっと他の奴がいるはずだ。例えば…お前とか?」
「生憎だが、俺は広範囲では活動できないんだ。やることもあるしな。」
「だが俺はただの人間だ。特別な能力も武器も持っていない。そんな奴に何ができる?」
「いや、あるぞ。」
そう話し、彼はどこからともなく道具を取り出した。
青年の手に腰につけるバックルと本の形をしたケースを渡される。
「これは…どいうことだ?俺はこれを知っている。」
彼は渡された道具を見つめ、思案する。何かを思い出そうとするが思い出せないそんな感覚。
「それはそうだ。元は君のものだ。君は戦士だ。高上優樹(たかがみゆうき)。」
青年は自分の名前を呼ばれた。「高上優樹」、それが彼の名前。だがそこに懐かしさを覚えることはない。
「それが俺の名前か?」
「そうだ。そして救世主リアクトとなる。」
「よ〜くわかった。だが一つ分からないことがある。」
「なんだ?」
「俺は何者だ?」
その問いに青年はうっすら微笑を浮かべる。
「君は戦士だあり、罪人でもある。だからこれからすることは贖罪も含まれいる。まあいずれ記憶は取り戻すはずだ…たぶん。」
(戦士であり罪人だと?俺は過ちを犯したのか?だが何をした。俺は…俺は!)
優樹は頭を抱える。
「一体俺は何をした?」
「その答えを見つけ出し、君が決心することができれば、君は贖罪を終わらせることができるだろうな。…さあ救いの旅に行け。案内役も用意してある。すべてを判断するのは自分自身だ。それをよく覚えておくんだな。リアクト…」
そして青年は消えていった。
白い空間には青白いオーロラが現れ、優樹のほうに向かってくる。彼は衝撃が来てもいいように目を瞑り、構えた。彼はオーロラに包まれ次の世界へと移動した。

そこは廃墟だった。人もいない。そこにはただ一つ。バイクが置かれていた。優樹は確信する。俺のバイクだと。
ヘルメットを被りエンジン音を轟かせ。廃墟を走る。
しかし、ひと一人いなく、廃墟の跡だけが続くだけ。だが目の前は一変。青白いオーロラが現れそこから、モンスターが現れる。それも大量に…。
優樹はバイクを止めて、降りる。
「あの野郎、俺を試すためにわざわざこんな世界に行かせたな、気に食わないな。」
一人愚痴る優樹。そうあの青年は彼の力を図るためにわざとこの世界に行かせたのだ。
「気に食わないが、自分自身の力もわかってないで、世界に救いに行くのもおかしいな。ここは奴の通りに動くか。」
そしてバックルとケースを取り出し、腰にバックルを巻きつけ、ケース―ギャザーブッカーから一枚のカードを取り出す。
「このカードを差し込めばいいのか。」
そしてベルト―リアクトドライバーの上と下の端を引っ張り、中央が展開する。
右からカードを差し込み、
《ヒーローライド...》
電子コールが鳴る。
「こうかな?変身!」
そして上と下を引っ張った部分を元に戻すように押し込む。
《リアクト!》
電子コールが鳴ると。いくつものマークが浮かび上がり一斉に優樹の体を包み、ブルーの瞳に、真紅のボディ、金色のラインが合わさった姿をみせる。
「さあ、せいぜい抗うんだな。モンスターども!」
リアクトはカードを取り出し、装填する。
《アタックライド…バースト》
電子コールを鳴らし、腰に装備してあったギャザーブッカーを銃形態へ変形させ。モンスターたちに撃ち込んでいく。そのままゆっくり歩をすすめ、モンスターたちと距離が縮むと新たにカードを装填する。
《アタックライド…スラッシャー》
次にギャザーブッカーは剣形態へ変形し、敵を切り裂いていく。しかし、敵の数は減る気配がない。
「ちっ、数だけは多いな。一気に蹴散らすか。変身!」
《ヒーローライド…ガロ》
牙狼」の世界でのヒーロー、黄金騎士ガロ。魔界より召喚した黄金の鎧を身にまとった姿へと変える。
続けてカードを装填する。
《アタックライド…牙狼剣》
ガロの専用武器を召喚し、敵をあっという間に倒していく。だが未だ半分の敵が残っていた。
「しぶとい奴らだ。変身!」
再びカードを取り出し、装填。
《ヒーローライド…リュウケンドー
魔弾戦記リュウケンドー」の世界でのヒーロー、魔弾剣士リュウケンドーへと姿を変える。マダンキーの力で3つのモードにチェンジする剣を用いて戦う魔弾戦士。
続けてカードを装填。
《フォームライド…ファイアーリュウケンドー
リアクト・リューケンドー(R・リューケンドーに略称)はフォームライドのカードを使い、ファイヤーキーの力により火炎武装したファイアーリュウケンドーへ姿を変えた。
「火力は絶大だ。一気に殲滅させる。」
《アタックライド…ファイアーコング》
炎の力を持つゴリラの獣王を召喚し変形し、R・ファイアーリュウケンドーにキャノン形態を武装する。
「これで終わりだ…」
《ファイナルアタックライド…リュ・リュ・リュ・リュウケンドー
「はああああ!!」
キャノン砲が一気に放たれ、敵を一網打尽にする。敵を倒したR・ファイアーリュウケンドーはリアクトに戻る。
全てが片付いたかに見えた…しかし、最後の一匹がリアクトに飛び掛かる。
「キサマ、ナニモノダ?」
その一匹が喋る。
リアクトは焦る様子もなく、
「ただの救世主だ、後でわかる…」
そう言い放ち、素早くカードを装填する。
《ファイナルアタックライド…リ・リ・リ・リアクト》
カードのシルエットがいくつもモンスターの前に現れ、リアクトはそこにキックを打ち込み、モンスターを爆散させる。
「一撃で片付かなかったのが惜しかったな…」
リアクトは自分への自己評価を呟くとバイクに乗り、青白いオーロラを抜けていくのであった。



オーロラを越えて着いた先は一軒の本屋が目の前にあった。そしてリアクトは変身を解き、吸い寄せられるように店に入っていく。店内は普通の本屋と違っていた。中央に丸いテーブルが一つ。あとは壁にびっしりと天井高く本が棚に並べられていた。本屋というより、図書館に近いそんな感覚。
そしてテーブルには一人の男が本を読んでいた。年齢は20後半、男は眼鏡をかけ、紳士的な服装をしている。
「ようこそ、黒野書店へ。そして君の拠点となる場所だ。高上優樹。」
男は本から目を離さず淡々と喋る。
「…ここから様々な世界へ旅立つのか…それより名前は?」
「ああ、済まない。読書に集中しすぎてたよ。私はこの店の店主で君のナビゲーターでもある黒野光明(くろのみつあき)だ、よろしく。」
眼鏡を掛け直し、優樹を見つめる。
(少し頼りがいがありそうだが…役に立つ部分も多くはなさそうだ)
優樹はそんなことを考えながら光明を見ていた。
「で、はじめに行く世界はどこ…だ…」
次の世界への話題を喋ろうした最中天井から眩い光が差し、手で光を除ける。やがて光が消え、優樹は天井を見上げると、そこには天井いっぱいに絵が描き出されていた。
その絵は禍々しく、触手や虫が描かれて赤い洞窟が描かれていた。
「『淫妖蟲』の世界だ。初めから厳しい世界を行かされるな。優樹、おまえ悪運強いな。」
「俺の所為かよ!…ったく、俺は全てを救う。初めから厳しくたって関係ない。俺は俺のできることをする。」
そう言い、優樹は天井の絵を睨むように見つめるのであった。



…続く