「世界の救世主・リアクト」

中世の時代にあるような西洋な街並みの中、2人の青年が街を歩き回っていた。街自体は平凡そのものだが、ただ一つだけおかしな点があった。
「ったく人一人いねえなー」
そう呟くのは、今までに2つの世界を救った、世界の救世主ことリアクト=高上優樹であった。
「ほんとうですね…みんなでどこかに出かけちゃったんですかね?」
少しばかり能天気に受け応えするのは、前の世界=戦乙女ヴァルキリーで仲間になった童顔青年、永井周希である。そしてまたの名をリルート。リアクトと同等の力を持つ者なのだ。
そして2人が言うように街には人の姿全く見えない。しかし確かに人がいた形跡はまだ残っていた。
「全員が出かけてるのは賛成できないな。家からは人の気配が凄く伝わってきてるぜ…」
「えっ、そうなんですか?」
周希は全くはそんな気配を感じなかったという様子。その態度に優樹は呆れながらもさらに言葉を続ける。
「それにかなり注目の的みたいだぜ、窓の隙間から凄く覗かれてるぜ」
そういい一つの窓に視線を向けるとそこにいたものの気配がすうっと消える。
「どうやら外に出てるのが珍しいみたいだな…ったくどうなってんだよこの世界は」
優樹は辺りを見回しながらここまでに至った、小1時間前の経緯を思い出していた。


優樹たちは前の世界(戦乙女ヴァルキリー)を救いホッと息をつき黒田書店でくつろいでいると天井の絵柄が変わった。
その絵柄は高原の湖岸にそびえ立つお城が描かれていた。
絵柄を見た一同は、
「またファンタジー系の世界かよ…バイクに乗ると凄い違和感が残るんだよなーこういう世界。」
前の世界の戦いで疲れて机に突っ放していた優樹が呟く。
「おおこれは凄いですね。でも何の世界なんでしょう?」
天井の絵柄が変わると同時に興奮気味に騒ぐ周希。
「自分の目で見てくればわかる。……この世界はすでに終わりに近づいてるみたいだしな」
そう答えたのは眼鏡をかけ本を片手に読書に耽る黒田書店店長(?)黒田光明であった。だが後半の言葉は小さく呟くのであった。
「最後のほうなんて言ったんだ?光明」
よく聞き取れなかった優樹は聞き返す。
「いいや、なんでもない。ただ気を付けて行くことだって言っただけさ。」
彼は優樹に目をあわさず何事もなく告げる。
「ちっ、あんま目立ちたくないから歩きで行くしかないか…」
少々光明の態度が気に食わない優樹であったイラつきを抑え外に出るのであった。


ということがあり現在に至る。
そこまで考えに耽っていた優樹であったが、ふと建物の間に見える路地裏から影が通り過ぎるのを目撃する。
すぐに切り替え優樹は影が通り過ぎた路地裏へ入り込むのだった…


世界の救世主リアクト、いくつもの世界を渡りその心は何を捉える?

第6話「人ならば…」


「本当に人が通ったんですか?優樹さん」
訝しげに訊ねる周希。この一人も外に出ていない街を見る限りやはりそう考えるのが当たり前であった。
「だがその影を追えば街の人が外に出ないわけも分かるかもしれないぞ」
そう言い聞かせ、裏路地を歩き続ける。裏路地だけに薄暗く、道は余り舗装はされていない。
しばらく歩くと、どこから女性の泣き声が聞こえる。2人は顔を合わせ急いで駆け始める。
そして女性の鳴く声が響く場所についた2人が目にしたのは緑の身体に2メートルは超すであろう巨体に醜い顔を浮かべた亜人が何人もの人数で1人の女性を囲んでいた。女性は裸で淫らの姿を晒されていた。優樹は目を凝らしてみたが薄暗い中で金髪の頭部しか見えず顔を窺うことはできなかった。そうしてるうちに囲んでいる1体がこちらに気づき、他の者も一斉に顔を向ける。
「何だ男か、死にたくなければさっさと失せろ。俺たちは今取り込み中なんだ」
一体の亜人が低いうなり声のような声で喋り始めた。
「どこが取り込み中だ、下衆が。さっさとそいつを放せ。そうすれば楽に殺してやる。」
亜人の脅しに微動もせず、見下すように言い放つ優樹。
「彼女を解放してください。あなた達は一体何者なんですか?」
「俺たちオーガを怒らせるとはいい度胸だ。八つ裂きにしてくれる!」
亜人オーガが5体が一斉に襲い掛かる。2人は早々とツールを取り出し、カードを装填する。
「「変身!!」」
2人は掛け声とともにそれぞれ変身する。
≪ヒーローライド……リアクト≫
≪ヒーローライド……リルート≫

複数の人型ホログラムが発生しバリアの役目を果たし、飛びかかってきたオーガを弾き飛ばす。赤の鎧と紫の鎧を身に纏ったものが現れ、オーガは唖然とした。しかしすぐにまた攻撃を加えようと襲い掛かる。
2人の戦士はカードを取り出し、再びツールに装填、
≪アタックライド……バースト≫
≪アタックライド……バースト≫
リアクトはギャザーブッカーを銃形態に変え、リルートはリルートドライバーの銃口をオーガ達に向ける。2人はエネルギー弾を高速連射でオーガ達に撃ち込んでいく。オーガ達は次々と弾を撃ち込まれ爆散していった。
後方にいる数体は2人の力に慄き、先ほどの女性を連れて逃げようとする。そして残りのオーガはそれを阻む様にリアクト達に突撃する。
「ちっ、よ〜く分かった。だが、そいつは放してもらうぞ!」
≪アタックライド……スラッシャー≫
リアクトはすぐさま剣形態に武器を変えるとオーガ達を切り裂く。血飛沫が舞い辺り赤一色へと染まっていく。リルートも迫りくる敵に銃撃をこなし、接近した相手には蹴りを加えて行く。
しかし、いきなりオーガの数が増え始める。
「うじゃうじゃ出てきやがって、一体どうなってやがる?」
リアクトは皮肉をぶつけながらも次々相手を切り裂いてく。
「優樹さん、貴方はさらわれた彼女を追ってください。僕がここで食い止めます。」
そう言い次々と銃弾を撃ち込みながらすぐにカードを取り出す。
≪ファイナルアタックライド……リ・リ・リ・リルート≫
高威力のエネルギー砲が先ほど女性を連れ去られた道をあけるようにオーガ達を殲滅していく。
リルートを1人にするのに多少不安を感じたが選択肢にはそれしかなく仕方なく済まないと一言加え、リアクトは道を駆けて行くのだった。

そのあとを追いかけようとするオーガ達であったが、銃弾によって遮られる。
「あなた達の相手は僕達です。」
≪ヒーローライド……シンケンジャー
リルートはカードを装填し、「侍戦隊シンケンジャー」(シンケンレッド抜き)を召喚する。全員が一斉にシンケンマルを抜き、攻撃を仕掛ける。
(優樹さん、何とか彼女を救ってあげてくださいよ。貴方は世界の救世主なんですから。)
その想いを募らせながら大多数に増えたオーガを相手するリルートであった。


リアクトはしばらく走るが一向に逃げ出したオーガ達を見つけることが出来ずにいた。そして立ち止り変身を解く。
優樹は辺りを見回すがやはり誰もいない。だが彼の眼にふと一つの建物が目に入った。
「絵柄と同じ城か…」
彼の目線の先には天井の絵柄にあった白い城がそびえ立っていた。
行ってみるか……そう思い彼は城へと歩を進め門の前へ立つ。そこで違和感を感じ始める優樹。
この城まで嫌な匂いが立ちこめている。いや……ここが一番ひどいのか?入ってみないと分からないか?

そうして歩を進めるが門の番人に止められる優樹。
「何の用だ青年?」
そう訊ねる番人。目はいぶかしげに見つめてくる。
「少しこの世界の事について教えてもらいたくてね。」
「そんな者街の案内人に聞け。ここは案内所ではない。」
「確かに正論だが街の奴らは人っ子一人外にいないんだが…」
「ぐっ、そ、それは」
番人は言葉に詰まる。やはり街に異変が起きているらしい。
「さっき襲ってきたオーガとかいう奴らに関係してるのかな?」
「何!?貴様オーガに襲われたのか?一体どうやって逃げだせたんだ?」
「オーガぐらいどうということはない。どうだ俺がオーガ退治する代わりにこの世界の情報を教えてくれないか?」
「くっ、少し待っていろ。」
そう言い残すと番人は城の奥へ姿を消した。しばらくすると番人が戻ってきて他の兵士に優樹は城の中を案内される。
そして大きな広間へ案内される。そこには兵士の隊長らしき男と一人の金髪の美女がいる。周りは兵士で囲まれ、変な行動を起こさぬように優樹を観察する。
「私はこの国の騎士隊長、キースだ。君みたいな青年がどうやってオーガを倒したんだ?」
先ほどの兵士の隊長らしき男、キースが優樹に訊ねる。優樹は目も合わせず1枚のカードを取り出す。
「これ奴らを払いのけた。」
「はっ!?何を言っているんだ。冗談を聞きに君をここまで通したわけではないんだぞ!」
厳しい口調で言い放つキースであったがまるで聞こえなかったみたいに普通の態度をとる優樹。優樹はあることが気にかかっていた。目の前にいる金髪の美少女だ。白い肌がドレスの腕から見られ誇らしいツリ目をしている。
そしてつい先ほどオーガに連れ去られた金髪の女性とも酷似していた。それにここに立ち込める匂いも尋常ではない。となるやはり彼女がさっきの……?それに彼女の表情に翳りがみえる。
「おい!聞いているのか!でたらめを述べたならさっさとここを立ち去ってもらおう!」
キースは優樹の無反応に腹を立て彼を追い出そうと腕を掴もうとするが、優樹はそれを払いバックルを腰に取り付ける。一同は一斉に緊張が走り、武器を構える。
それに微動だにせずカードを装填。なにも告げずバックルを回す。
≪ヒーローライド……リアクト≫
そして一瞬のうちに赤い鎧を身に纏う。その姿に唖然と見つめる兵士たち。
「これで信じてくれたか?騎士長殿。」
棒読みで喋るリアクト。キースは先ほどの変身に驚き言葉を失い、頭を縦に振るしかできない。
「それで、ついでだ。あんたは何者だ?女王かな?偉そうに椅子に座っているということは」
リアクトは金髪の美少女に訊ねる。
「……いえ……私はリブファール国王女ジャンヌ・クルノーブルです……」
何故か彼女に覇気は感じられない。しかしそこをスルーして、
「ジャンヌ、お前は何を背負っている?」
リアクトは確信を突いた言葉を突き付ける。ジャンヌは先ほどの言葉が効いたのか唖然とした表情でリアクトを見つめる。
「貴様!王女を呼び捨てに!分を弁えろ!」
キースは王女を侮辱されたと思い声を荒げ、剣を向けるがリアクトもまたギャザーブッカーを剣形態に変えキースへ刃を向ける。
「お前には聞いてはいない、俺が聞いているのはジャンヌにだ。まあ質問を変えよう。この世界で一体何が起きている?」
剣をすぐに降ろしジャンヌに訊ねるリアクト。
そして気を持ち直したのかジャンヌはこの世界について話し始める。

王女ジャンヌ・グルノーブルは、剣技にも魔法にも優れた才能を見せる若き姫。
ひとたび彼女が戦場で戦うこともしばしある。
しかし、平和なリブファールに野蛮な亜人オーガたちが侵入してくるようになった。
そして現在その最前線で戦っているのだという。
王女らしからぬたどたどしい言葉であったが、大体この世界について理解しどういうものか知った。
「姫騎士ジャンヌの世界と言ったところか……よ〜く分かった。じゃあ早速オーガ退治と行きましょうか。とその前に俺の仲間を連れてこないとな。じゃあな、姫さん。後でこの世界を救ってやるよ、必ずな。」
そう言い残し、立ち去るリアクト。と同時に変身を解き扉を開きかけた所で振り返り、ジャンヌに視線を向ける。
「さっき言ったことを忘れるなよ。人は1人で背負い込めば必ず自滅する。だが誰かと共に背負うことができるのならば必ず乗り越えられる。それが人間さ、姫さん。」
と優樹は伝えるとその場を後にした。広間は静寂に満ち、まるで嵐の過ぎ去ったような感じであった。


優樹が去った後、ジャンヌはそのまま椅子に座り、その場にキースだけが残っていた。
「ジャンヌ様、先程は失礼しました。あのような輩を連れてきてしまいまして……」
キースは片膝を付けジャンヌに謝罪をする。
「いいえ、構いません。しかしあの力、恐ろしいです……彼は本当に救う気なのでしょうか?」
「分かりません、仲間がいるようなことを言っていましたが、果たして少数でオーガ共を払いのけることができるのか……失礼ですが姫様、先ほどの青年が言っていたように何か背負われているのですか?」
その言葉に息を飲むジャンヌであったが、
「何も悩みを抱えてなどいません。大丈夫ですわ、何かあればしっかり意見を窺います。」
「なら構わないのですが……」
「で、では私は少し自室で休ましてもらいますわ…」
そうやって言い残すとジャンヌはその場を後にするのだった。


優樹は城を後にし、周希に協力して貰うべく彼を探す。あれだけのオーガを相手したからには少々疲弊してるも知れないと考えた優樹は先を急ぐ。だが大きな広場へ出たときに彼は1人の人間を見つける。広場の中心で誰かを待っていたかのようにオブジェに寄りかかりながら、そして銀色の髪を靡かせながら、
「これ以上君に世界を救われては困るんです。……非常に」

「お前は……!」
そこに寄りかかっていたのは前の2つの世界でリアクトを妨害してきた銀色の髪の青年であった。

「君の救いは非情なのです。」

「何故だ?何故救うことをお前は許さない?」

「君は物語を変えてしまう存在だからです。この世界の物語はもう終わりへと近付いています。だが君は物語を変えまだ続かせようとする。それは非常に由々しきことなのです。君が何もせず通り過ぎてくれれば世界は通常通り。君が手を加えれば物語は続き人々は苦しむ。君は世界を傷つける。だから疫病神なのですよ。」
リアクトが疫病神であることを銀色の髪の青年は説いていく。だが優樹はそれに反抗する。

「ああ、確かに物語は終わる。だがこれは間違っている、こんな終わり方認めるわけにはいかない。まだ誰の笑顔も見れず、悲しむ顔で終わるなんて出来はしない!」

「ですが、もう終わりです。あのお姫様はもう堕落しています。きっと君の救いも届きません……」
そういい晴れ間の見える空へ目を向ける。



その頃城の一室では、淫らな姿のジャンヌがベットに横たわり赤い巨体の亜人オーガに責めたてられていた。
「ハハハッ!何がこの世界を救うだ。もうこの国は俺の、ギドー様の手の中だ。そしてジャンヌ、お前は俺の家畜となった。もう俺たちオーガに抗える者などいない。抗う者は焼き殺すまで、フハハハハ。」
「くっ!」
ジャンヌは下唇をかみ、忌々しげに自分を呪う。
(お父様ごめんなさい……ジャンヌは国を救うことができませんでした)
「ジャンヌ、俺の子を孕み、堕ちに堕ちるがいい。貴様が抗い俺に傷つければ、貴様の母親も妹も同様に傷つくのだからな」
ギドーは魔術により母親と妹の命を糧に賭けた。そうすることによりジャンヌに身動きをさせず、調教を施したのだ。
もう彼女に抗うすべなど存在していなかったのだ。


「これも貴様の仕業か……?」
「いいえ、生憎野蛮な種族とは手を組まない主義なので。」
「ちっ、ならばお前は何をした?」
「今からするんですよ。君を世界から追い出す事を」
パチンッ!と指を鳴らすと青白いオーロラが姿を現す。
そこから現れたのは茶色と黒の鎧を身につけ、大きな巨体から小さな異形の者が5人オーロラから姿を現す。
そしていきなりそれぞれポーズを決め、
「「「「「ギニュー特戦隊!!」」」」」
ギニュー、リクーム、ジース、バータ、グルドが優樹の前へ立ちはだかる。


「さあ、今度こそここが君の終着点です。疫病神はついに地獄へ落ちるのです。それではさようならリアクト。」
銀色の髪の青年は高らかに言い放つとオーロラの向こうへいなくなるのだった。
「我らギニュー特戦隊に勝てると思っているのか、ただの人間ごときが……フリーザ様の手を煩わす事もない。」
そう語るのはギニュー特戦隊隊長ギニューであった。
「それはどうかな?ギニューだか牛乳だか知らないがここで死ぬわけにはいかない!」
そう言い、カードを取り出しバックルに装填。
「変身ッ!!」
≪ヒーローライド……リアクト≫
複数のホログラムが彼を覆い、赤い鎧へと装着していく。
その姿に驚く5人。
「なんだよ、あれ」
「おいおい聞いてないぜ」
「こいつの戦闘力は幾つだ?」
特戦隊の一人、リクームが気の強さを数値化したもの、片眼鏡型の装置の「スカウター」によってリアクトを調べるが、どんどん数値が上がり、ついにひび割れてしまう。慄く5人。

「ぐあああああ!スカウターが割れちまった!!」
「化け物がこんな世界に何故いる?」
「救世主だからさ、それがここにいる理由だ。」
そう言い放つとリアクトは武器を片手に5人へ挑んでいくのであった…


……続く


次回予告
リアクト「人は人でなくなる時、全てを失う。それでも守りたいモノがある!」

ギドー「貴様の声など届かん、ジャンヌはすでに堕ちたのだ」

ギニュー「バ、バカな!?我らギニュー特戦隊が!!」

リアクト「黄金の騎士でいかせてもらおう!ハアッ!!」

リルート「優樹さんは疫病神じゃありません!!」

黒田「どこまでも黒くなれる。それが人間だ」



第7話「人間の証明

全てを救い、全てを修正(なお)せ!!


追記……すいません!有名な小説の題名をタイトルにパクってすいません!
これしか思い浮かびませんでした。orz